ヨーロッパの木の玩具展、ヴェルナーさんの技

クリスチアン・ヴェルナー氏、アンドレアス・ヴェルナー氏の来日に合わせて行ってきました。目黒美術館で開催中です。

素晴らしい展示でした。
展示室は3つのテーマで分かれており、1つは手を使って遊ぶ、育むおもちゃの部屋、次は伝統工芸品としてのおもちゃの部屋、そして、動物のおもちゃがずらっと列をなす動物のパレードの部屋でした。

もちろん撮影禁止ですから展示の写真はありません。そして展示ですから触ってはいけないのですが、手を使って遊ぶおもちゃの部屋で、何度思わず手を伸ばして我に返って引っ込めたことか。おもちゃたちが『触って!』『動かして!』って待っているんですよ。そこにあるだけで手を伸ばしたくなるのです。力あるおもちゃです。またほんと、美しいです。ヨーロッパが町並みや景観を大切にしている美意識から伝わるように、美的であることは大切なのですね。
このコーナーではフレーベル・モンテッソーリ・シュタイナーについて詳しい解説がありました。以前、書いたことがあります。こどもがおもちゃで遊ぶことについて、欠かせないところだと思っています。日頃、子どもが育つのに良いおもちゃは必要だよ、と考えていることが、教育者たちの理念を理解することで再確認できました。

次のお部屋、伝統工芸品としてのおもちゃは、その歴史から丁寧に解説されており、じっくりと読み込み、展示もたっぷりと眺めてきました。伝統的な技術を得るために修行し、マイスターまで取得すると超一流の職人ということですが、なぜ3Dプリンターもある時代にひとつひとつ手で作る?そしてそれを残そうとする?
では、複製されたものと、手で作り上げた、見た目同じものが並んでいたら、人はどちらを好ましく思うかというと、多くが手で仕上げたものだろうと思います。人がやっていることだから、その最中の作業に思いを馳せることができるからでしょうか。
伝統技術は一度途切れたら復刻が難しいと思います。いくら先端技術が発達した時代になっても、失ってはいけないと考えているその思いに共感できるものがあれば、自分なりの方法で残して行きたいと思います。それが私なら店内でご紹介していくことなのだろうと思います。

動物のパレードは、おもちゃの出典が掲示されていませんでした。たまたまおもちゃ屋同士で見ていて、いろいろ詳しい知識を聞かせていただき勉強になりました。「このフォルムはヴィターリだよね」「ヴィターリと言えばかなり偏屈でね」とおもちゃ談義、作家談義。脳内では動物の謝肉祭のフィナーレの曲が流れっぱなしでした〜

ヴェルナー氏のライフェンドレーエン実演ワークショップにも参加してきました。ライフェンドレーエンの部分はクリスチアンさん、削り出しから着色を息子さんのアンドレアスさんが担当して見せてくださいました。たくさんお話しが挟まれ、その歴史、これまでの葛藤、心の中の思い、これからの希望、今まで知らなかったことがしっかり伝わってきました。

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私はクリスチアンさんのお父さんであるヴァルターさんの時代のことはあまり良く知りません。2008年に亡くなられたので私がおもちゃ屋を始めた2004年はもう第一線から退かれていたと思います。クリスチアンさんからはヴァルターさんのお話しがたくさん出てきました。本物の職人魂を持った方で、厳しく偏屈でもあったようです。身近で鍛えられながら、反発したり同じことはしたくないと思ったり、そんなことも話されていました。でもザイフェンの地で、この伝統を伝えていきたいと言う思いに至り、息子さんのアンドレアスさんが同じようにマイスターとなったことは心強いことではないかと思いました。背中を見て育つってこういうことなんでしょうね。

それにしても、ドイツのお二人大きいです。何度も体力勝負だとは仰っていましたが、引き締まってスタイルいいです、びっくりするような長い脚。
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良いものを見せていただきました♪