子どもが変わる瞬間と、モンテッソーリ

モンテッソーリの考え方で遊ぶことに学びを得たある日のエピソードです。

ご家族でご来店くださいました。明るくて意欲あふれる上のお子さんと、好奇心旺盛な下のお子さん。下のお子さんは、自分で動きたい、気になったものには触れてみたい、そんな時期です。ですが、店舗の中なので、何でも引っ張り出したり、剥がしたりするのは、大人は止めたいところです。ご両親もとても気を使ってくださって、抱っこしたり、見ていてくださるのですが、お子さんにしたらパワーを閉じ込められることには全力で抵抗するのも当たり前。なかなかゆっくりと店内をご覧いただくのが難しい時期ですね。

ふと思い当たって、先日仕入れたバルタグラさんのモンテッソーリ遊具、『3色リングさし』を前に置いてみました。

それまでの動きがふっと止まり、見つめています。そして手をのばして、一番上の青いリングを抜きました。しばらく眺めて、また戻しました。あまり困難もなく戻せました。できたことに、ご本人はちょっとびっくりしているようでした。そしてまた青だけを取り外し、戻す。青ばかり、何度も繰り返しました。その様子は、直前まで忙しそうに動いていた様子とガラッと変わり、集中できるものに出会ったときの、とても良い意味での子どもとは思えない、見ごたえのある表情でした。お家の方も側で見守ってくださり、しばらくその動作を楽しむお子さんは、別世界にいるような、そんな雰囲気でした。

大人の方にも都合があり、側を離れなくてはいけないときが来ます。そのタイミングだったか、元々のお子さんの区切りだったのかはわかりませんが、この遊びは一旦終わって、元の様子に帰ってきました。

モンテッソーリメソッドには、教具を提供する手順があります。その手順をよく見てなぞることの意義を学びましたが、私は、今回何も言わずに目の前にモノだけ置いてみました。おもちゃコーディネーター養成講座でも学びますが、育ちのステップには反射的な時期があります。提供者である大人は、十分に集中を引きつけた状況で提供を見せてあげるのか、まず集中を引くためにモノを使うのか、その場で判断することが求められるのではないかと考えています。

それにしても、大きさと色の違う3つだけのこの円柱さしは、物足りないとか、すぐに飽きそうと言われそうですが、とても良く考えられている良いおもちゃだと思いました。ピースの重みに手応えがあり、円柱を落としたときの、チャッという音が心地よい。もう一度聞きたくなると思います。支柱の高さや太さが難易度にほどよく対応しています。興味を持った、手を伸ばした、できた、もう一度やりたい。ただ子どものこの姿を楽しみながら見守れる大人が側にいれば、子どもは幸せなことだろうと思います。

どの子にも、スッと変わる瞬間があることを何度も見てきました。そこにはいつもおもちゃがありました。もの言わぬ静かなおもちゃが子どもに最も寄り添ってくれていると度々感じます。そのことに気付ける大人であることが、役割なのだろうと思います。