イタリア芸術教育WSご報告〜アレッサンドラさんをお迎えして〜

11月4日。医学町ビル201号室にて、イタリアよりアレッサンドラ・ファルコーニさんをお迎えしてイタリア芸術教育ワークショップを開催しました。おもちゃコーディネーター養成講座他お世話になっております子どもと育ち総合研究所(総研)さんよりお声かけをいただき、新潟での開催が実現しました。

とても貴重な機会でしたが充実したワークのためには多くの定員が設定できません。すぐに満席になってしまいましたが、医学町ビル201号室は、定員にちょうど良い大きさで、雰囲気も良く、アレッサンドラさんにもとても素晴らしいお部屋です、と言っていただきました。

まずファミリー向けのワークを行いました。
廊下で受付を済ませていただき、お部屋にお招きし「ようこそ」とお迎えするところからワークのスタートです。ちょっとドキドキしながら、ワクワクしながら、思い思いのテーブルにつきました。
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ここから先、アレッサンドラさんの魔法にかかったようにワークが進みます。ワークの流れがひらめくまでの感性(アレッサンドラさんの準備にはお一人の時間が必要です。彼女から湧き出るアイデアにしばし身を任せるようです。)、そしてそのための緻密な準備。緻密な準備と言ってもこの通りやるという計画に沿ったものではなく、そのときにひらめいたことがすぐにできるように、使うものも使わないかもしれないものも、たっぷり準備することです。1時間以上を準備にかけられるとのこと。
今回はステンシルと版画を使いました。みなさんすぐに夢中になってワークを進めました。時々版画、時々ステンシル。
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ずっと版画の人もありますし、ちょっと休憩の方も。そろそろいいかなと思った頃スッとはさみが手渡され、また新しいスイッチが入る。
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はさみももう十分使ったな、と思った頃新しい紙や糊が届く、大体良いかしらと言う頃にはアプリを使った音声も経験しました。このあたりこの時代のものですね。子どもがスマホを操作するのは止められない時代に、自分のアートから音声を体験するアプリで作品を楽しむ時間は有効活用と言えると思います。
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ひらめきを助ける道具、そしてそれらを使いこなすための準備。ワークに入ってからはリアルタイムのやりとりと提案。指導者となるには相当な時間と経験が必要だと思いました。大変気持ちの良い作業時間に乗せてもらっていたように思います。
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続いて指導者向けワークです。お部屋の様子が変わります。落ち着いた雰囲気に。

初めて登場のイタリアントイを使ったワークのようです。少し複雑な、そして美しくおもしろいステンシルの道具でした。なぞる、染め出す、塗りつぶす、組み合わせる、切り取る、反転させる、いろんなことができます。少しずつ、何ができるかワークを重ねていきます。
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美しいですね。それぞれに個性があるのに調和しています。
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ご参加の皆さまへの思いは、このステンシルの使い方に留まらないことが伝わりましたでしょうか。

実は予定通りの2時間のワークのあと、質問タイムが1時間にわたりました。すみません、延長しました。この時間がとても良かったです。それぞれ向き合っている子どもへのアート活動に対する具体的な疑問にお答えいただいているうちに、アートワークへの印象が少しずつ変わってきたのではないでしょうか。
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今も、きちんと座って、棒状の用具を持って、殴り描きから丸へ、線へ、形へ、いわゆる『絵』へ、それを0歳から積み上げていくのが幼児期のアート活動とされているように思いました。なので、座れません、扱えません、描けません、という質問から始まりました。それに対してアレッサンドラさんは、その年齢で起きる当たり前のことをアート活動につなげていくヒントをくださいました。座れません、それは当然、全身を使って表現してみたらどうでしょう。描けません、描かせようとするのではなく構成的な活動から表現を楽しんでみましょうか、などと。実際前半のワークでも、写し取って、切って貼っていくうちに、『描きたい』がわいてきた人がたくさんいたのです。見えてきたものに何かを描き加えたいと言う気持ちが起こりました。

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大切なのは指導者のひらめきと道具、そして準備、まさにアレッサンドラさんが実践されていたことがポイントであることに焦点が当たり始め、質問の内容も変わっていきました。どうやったらそのようにひらめくのでしょう、今までに出会った素敵なひらめきや表現を知りたいです、そんな内容になっていき、気がついたら1時間、と言うわけ。

その答えは、自分が表現を十分楽しむことにあると思いました。だから、1度のワークでは伝わらない、何度もワークを体験して欲しい、と言うことも。時間がかかりますよ、と言うことも。

それぞれの作品をお持ち帰りいただき、お部屋を片付け、もう少しお話しする時間をいただきました。そこで聞けたこともとても良かったです。
イタリアはモンテッソーリメソッドが生まれた場所。私も関わりを持ったモンテッソーリですが、モンテッソーリメソッドとイタリア芸術教育がどこで出会うかといったお話には共感しました。
イタリアの教育事情については、0から6歳の期間をとても大切なものとして大きな予算が取られていると言うこと。でも、早くからお勉強をさせるという考え方ではないこと。アレッサンドラさんは、日本の子どもが小さいうちから器用にはさみを使いこなすことに驚いておられました。イタリアでは子どもはもっとやんちゃだし、雑ですよ!と。イタリア全体に幼児教育の大切さがすでに認識されており、アートも含めた活動が盛んな中で、アレッサンドラさんのイタリアにおける役割をお聞きしました。イタリアの先生たちにはもっともっとひらめきが必要、アイデアが必要なんですよ、それを伝えていかなくては、とのことで、新潟で先生方が疑問に感じ始めたことが、イタリアではもっと具体的に学んでいく題材として成熟していることを思いました。

今回の来日で、アレッサンドラさんは大阪、東京、前橋、そして新潟でワークを開いてくださいましたが、総研さんによると新潟では参加のお子さんの年齢が小さい傾向にあったとのこと。また指導者ワークも乳児クラスを担当されている先生も多くいらしたようでした。小さいうちから出会っていただけたのは良かったと思います。この先、自分の表現をのびのびと楽しみ、美しいと感じる心が育ち、一生おもしろいことをひらめきながら過ごしていける礎となると嬉しいです。また少しでもそのような機会作りに関われていけたら、と店としても思いました。

また次の機会も計画していきます!
ご参加ありがとうございました。