ドイツの旅にて、フレーベル博物館での学び

忘れないうちにフレーベルの学びをまとめて行きたいと思います。
まずフレーベル博物館で学んだことから。

こちらがフレーベル博物館。今は博物館になっていますが、元は、この建物はフレーベルが建てた世界で最初の幼稚園でした。


フレーベルのシンボルも看板に描かれています。

フレーベル博物館では、博物館管理官のロクシュタインさんからお話を伺いました。
初めて幼稚園ができたのは1840年のことです。日本だと江戸時代の後期ですね。
大昔には女性と子どもは人口にカウントしないということもあったわけですが、けっこう近代まで子どもをその特性に注目して特別に扱うという概念がなかったようです。なので、今ではあたりまえの幼稚園も、当時は周りを驚かせるものだったのではないでしょうか。

幼稚園-キンダーガーデンは、『子どもの庭』です。
子ども自身が、遊びを中心とした行動を通して、自分で学び、自分で考えを発展させる場所として幼稚園は設置されました。
庭というのは、そのままの意味です。外で草花や作物を作る場所です。庭に種を植えましても、何もしなければ芽も出ず育ちません。発芽に適した環境と、適切なお世話があってこそ、芽を出し育ちます。ただし、その育ち方はその種が持つものと環境によりそれぞれ違います。子どももこれと同じということ。適した環境と適切なお世話が必要です。
子どもがお庭のお世話をすることは、幼稚園生活でも大切なこととしていました。


これが当時から残っているお庭。ひとりひとりの区画があったようですよ。

適切な環境として、遊び道具-おもちゃを大切に考えました。適したおもちゃは子どもの力を引き出すものと考えられました。それらも、自然の法則からいただいたものとして、日本では『恩物』と訳されていますが、成長段階に合わせて考えられています。


第1〜第6の恩物です。

最初は柔らかい色付きボールです。目で物を追うことができるようになった子どもは、ボールの動きを見て、「そこにある」と認知します。ボールの動き、ボールに伴う大人の言動、ボールが見せる変化に次々と子どもの興味が湧いていきます。ボールでどれだけのコミュニケーションが可能か、やってみたら楽しいと思います。

次は球体、円柱、立方体です。世の中にボール以外の形があることに気持ちが向いていきます。どこが違うのか、何が違うのか、子どもの発達とともに、これらの形も活躍を発展させます。

3歳ころからでしょうか、積み木が用いられています。
恩物3の箱には立方体が8つ入っています。3歳ころには身の回りにあるものをかなり認識します。この8個のキューブで何が作れる?身の回りの何に例えられる?言葉も発達してきますから、どんどん言葉をやり取りして、子どもの身の回りのこと、それから子どもが備え持っている感性に寄り添っていきたいです。そんな目で見ると、たった8個のキューブにかなりの可能性があることに気づきます。


これは、8個のキューブでどんなパターンが作れるか、のほんの一部。こういう遊びをしているだけでも一つのまとまったプロジェクトですよね。

※8個のキューブは、まとめるとまた大きなひとつのキューブになります。小さなキューブのかけらと同じ形で片付けることができるのが、これまた大切なことなのです。

恩物4の箱になると、レンガ型が8個になります。キューブはどの面も同じ形でしたが、レンガは3つの異なる面があります。形の特徴を生かしてできることが広がりました。さらに恩物3と組み合わせて発展させていくことができるでしょう。
恩物5、6、そしてタイルやスティックやドット、子どもはどんどん情報を増やしていきます。

お気づきかもしれませんが、大人の関わりが重要になってきます。フレーベルの幼稚園では、親がおもちゃを使って子どもとどう関わるかを講義する、親のための部屋も備えていました。幼稚園は子どもと、またその保護者のためのものでもありました。適切なお世話とは、整った衣食住に加え、子どもが発芽し自分の力を育てる元となる刺激を与えることでもあるのですね。おもちゃはその道具です。恩物は基礎的な考えを助けるものとして、科学的に理にかなっていると感じました。

フレーベルの研修に参加して、実際に私たちもこの恩物を使って遊ぶプロセスを辿りました。次回はそれをご紹介したいと思います。


博物館内にあったモビール。
折り紙の発祥は日本とは限らないかもしれないのです!光と影を意識しています。


この博物館から見える風景。私なんかこれだけでも充分なんですけどね。


博物館内にある子どもが遊ぶための環境を整えた部屋。
このように保育室を整えることができたら素晴らしいことだと思います。

なるほど幼児教育の原点とはこういうことなのね、と思いました。
今、どんどん、幼児教育の場では子どもではなくて親へのサービスに重点が置かれ始めています。原点に戻って考えなおす一人でありたいと思ったのでした。