1日目です。山のモードに入ります、というのは、5時前には起きて6時に出発するような生活リズムです。空は曇り。予報では少し雨に当たるようです。山道を1時間ほど走り、登山口に着きました。同時にポツポツ降り出してきました。雨装備を整えます。
さて、歩き始めます。最初は樹林帯なので、枝や葉っぱが少し雨を遮ってくれて、しとしと小雨の中を歩く感じです。登山道にはなっていますが、歩き始めは体も慣れていないのでちょっと辛い。ペースを整えながら黙々歩きます。体が資本。水分やエネルギーが切れたら動けません。水を飲んだりちょっとしたおやつを食べながら歩きます。

私は小粒あられとセサミクラッカーとドライベリーをミックスしてジップロックに入れます。
最初のポイントは三角点というスポットです。樹林帯を抜けて、周りに高い木がなくなります。森林限界を超えると「山に来た!」というテンションが上ります。同時に雨も上がりました。ワクワクしてきました。大休止を予定しているのは太郎平小屋。そこまでもまだまだ長い。雲ノ平は遠いのですよ。歩く。ひたすら歩く。
山に登る前に地図を見たりアプリで登山計画を立てます。宿泊を伴うにしろ日帰りにしろ、とにかくその日のゴールに安全に到着するためには、逆算していつ頃にはこのポイントに着いていたいと言う目安が必要です。遅れがちなら計画を変更する必要もあります。
太郎平小屋に着きました。ペースとしてはだいたい予定通りのようです。今日のゴールはもう一つ先の山小屋である薬師沢小屋です。このまま向かえそうです。

道は続きます。ここまで登ってきましたが、今度は沢へ下っていきます。距離は登山口から太郎平までより短いですし、下り道です。もうひと頑張りだろうと思っていました。しかし太郎平までの疲労が直撃するのですね。ペースが落ち、なかなか着きません。足元が怪しくなったか、初日から足首を捻ってしまいました。一度ひねるとクセになって、何度もぐきっぐきっとダメージを重ねていきます。これは腫れるなと覚悟しながら歩きます。
山ってそういう場所で、怪我しようが具合が悪くなろうが、休めるところまで自力で行くのが鉄則。本当に動けなくなって救助を要請するまでは自己責任。周りが冷たいのは常識です。誰も優しくしてくれないです。かなり極限の世界です。なので、火事場の馬鹿力的なものも発生します。本日のゴール、薬師沢小屋に到着しました。着いてすぐ、沢の水で冷えたキリンレモンのペットボトルを買いました。山価格は1本700円です。スタバより高いキリンレモン。普段はジュースは飲まないです。ですがもう、本当においしいの。ビールが飲めないのでキリンレモンですが、周りのみなさんは堪えられない表情でビールを流し込んでいました。
受付を済ませて本日宿泊のお部屋に入ります。なんと表現したら良いのでしょう、プライバシーゼロです。一応一人一組お布団と畳がありますが、雑魚寝です。着替え用の山スカートを持ってきているので、てるてる坊主になって着替えます。足首は腫れていました。持参のテーピングを巻いて固定します。痛みはわかりにくくなります。自分に割り当てられた一畳スペースで荷物整理をします。
ちょうど片付いた頃に夕食です。普段よりしっかり食べるよう意識します。明日も動くので食べておかないと、命に関わります。食べ終わったら夕方6時半。電波も届きませんし、もう寝るしかすることがなくて、就寝午後6時半。一日目が終わりました。
薬師沢小屋の夜はとても静かでした。山には山の共通理解があります。それは同調圧力とは全く質の異なるものです。山では自分さえ良ければよいという概念が成立しないから。きちんと食べてしっかり眠ることを、自分にもその場に居合わせた人にも保証すること。山小屋で働く人たちは言葉少ない。ですが注意書きなども最小限。言われなくてもわかる必要がある。照明は暗い。インフラが貴重品の場所です。この静けさから生まれる安らぎが、山が好きな理由のひとつだということに今回気づきました。